ジョバンニ、らっこのうわぎがくるよ。
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えーっと。
『おお振り』SNSの
『ものづくりについて語り合おうチャット』(だったっけ)に参加したとき
文章のメイキングを見たい、という意見に触れて
すっごくびっくりしました。
メイキングってイラストレーションとかコミックスだけかと思ってたんで…。
その後も熱意のあるコメントを寄せて戴いたり
望んで下さる方も多かったのちょっとだけやってみようと思います。
皆様の参考になるのかどうか…
お声をお聞かせ願えればと思います。
とりあえず前二つの記事にサンプルを載せましたので
そちらを参照しながらご覧戴ければと思います。
逐一の説明の前に、まずは全体の流れを。
1 まず描きたいネタを思い浮かぶ。
それに関連して洗いものや移動の間最中などぼうっとしている時に
云わせたい科白・描きたいシーンなどが思い浮かぶ。
これを個人的に「ハイライトシーン」と呼んでいる。
因みに『18.44』では
* シークエンス3の花井が三橋を追い詰めるシーン
* ボールをロッカーにぶつけて花井に警告する阿部
* 阿部の部屋での阿部と三橋の話し合いのシーン
がハイライトシーンでした。
2 そこから派生して、あれもこれもと
詰め込みたい科白ややりたいことなどの要素が
てんこ盛りに思いつく。
3 ここからが北川の一番のこだわり。
ひたすら引き算。
2で思いついたことを全て詰め込むと本当にただの
「素人がお遊びで書いた文章」で終わってしまうので
そこからやりすぎな要素をひたすら引いて引いて引きまくって
「作品」の意気に昇華させる。
ひたすら理性と欲求を闘わせる。
原作寄りに、原作のキャラが取りうる範囲内に言動を収める。
突飛な設定、言動はさせないように、
リアリティを失わないように気を付ける。
これに留意しなかったらただの自己満足。
この容量でハイライトシーンは比較的細かく、あとはかなり緩く
最初から最後までプロットを立てる。
これは比較的流動的であり参考程度。
4 実際に書き始める。
最初から順を追って書く。
そのときの『降り具合』や気分で文書が全く異なる。
北川は究極の気分屋のため、執筆に向かない気分のときは
一行たりとも書けない。
ひたすら書ける気分になるのを待つ。
読者様を抱える身になった現在の自分にはそぐわない描き方であり
ただただ申し訳なく思うのみである。
5 執筆中の留意点一覧
* 細かい表記、改行、漢字・ひらがなの別など
見栄えにも気を配る。
* 文節、文章、科白のリズム
読者の方が読みやすいように頭の中で読み上げ
読みやすさを確認しながら書く。
* WORDのページの変わり目がパラグラフの終わりになるように
だが行間の余韻を出すために、
サイトにUPする文章はWORDでの決定稿とは異なった
改行量であることが殆ど。
WORDとサイトでは同じ改行量でも印象が異なるため。
6 * 書いていて一番楽しいこと
5のような細かいところに神経を使うこと
* 書いていて一番キツいこと
陳腐な表現しか思い浮かばず
表現したい凄みをちっとも表せないこと
イメージを具体的な言葉に落とし込む作業が難しい。
7 ラストはぼんやりとしか決まっていないので
書きながら思いつくことが殆ど。
6の作業中は『最後どうなるんだこれ』と思いながら
書いていることが多いが実際に指を動かして書いていると
ラストに差し掛かったところで自然と指に降りてくることが多い。
8 初稿が完成した後は校正、誤字脱字修正、推敲の嵐。
北川の未熟さ、不束さからこの作業量が多いのも
我が息子たちの特徴。
「降りて」来た時は全くこの工程を必要としないが
気分が執筆に向いていないときに書いたものほど
この作業量は多くなる。
この作業もとても楽しい。
細かい調整でオレ好みにしていくのが好きなようです。
という流れです。
では次はいよいよサンプルを細かく取り上げていきます。
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からからからから。
スポークが単調な音を立ててから回る。
目の前のアスファルトを踏みつける薄汚れたスニーカーから顔を上げると、
薄闇の中に鮮やかに浮かび上がる白いシャツが視界に入った。
じいいいいい。
間延びした虫の音がぶつりと途切れる。
足を止めて歩みの遅い自分を振り返る阿部。
視線が合うと同時に再び自転車を引いて歩き出す無言の背中に、
ああ、残された時間は少ないのだと執行猶予を祈った。
どこもかしこも片付けられた広い部屋の真ん中に所在無く座り込む。
『飲み物持ってくるからテキトーに座っとけ』と云われて残されたまま
落ち着かなくてきょろきょろと部屋を見回す。
始めて訪れる阿部の部屋。
薄いベージュのラグマットとデスクとベッドと、
雑誌やら本やらが詰め込まれているカラーボックス。
じり、と膝だけでにじり寄ってみると
スポーツ雑誌やら野球の理論の本などが
ずらりと並んでいるのが見て取れた。
うわ、凄い。
さすが阿部君。
スポーツ障害、リハビリテーション、テーピン…グ?
見慣れない単語から視線を落とすと
一番下の段にアルバムらしき黒い背表紙が並んでいるのが目に入った。
い、いいか、な。
阿部君が戻ってくる前に戻せばいいよね、と
心の中で言い訳をしてそれを取り出す。
ズシリと重いそれを床に置いたまま分厚い表紙をぱくりと開く。
フィルムの奥の、古びたロッカーが立ち並ぶプレハブ。
部屋の隅に立てかけられた数本のバット、色あせたベンチ、
床に置かれたダンボールの『MIZUNO』のロゴ。
これ、どこかのクラブハウス…?
次の写真をめくってようやく理解出来た。
どうやらシニア時代の写真を集めてあるアルバムらしく、
次のページには合宿所と思しき部屋の畳の上で
先輩らしいアンダー姿の人にふざけて圧し掛かられて
もがいている阿倍の姿があった。
『ちょ、見てないで助けて下さいよ!』
周りで笑い転げるチームメイトにそう訴える彼の声まで聞こえるようだ。
思わず自分も苦笑しながらページを捲る。
そこには今よりも幼さを残した阿部が無愛想に
何枚もの写真に写りこんでいた。
何枚も、何枚も。
自分の知る阿部よりも少し髪の短い彼。
オレの知らない、阿部君。
そういえばあまり写真に写るのは好きじゃなかったな。
写真苦手なの、昔からだった、んだ。
くすりと笑いながら次のページを開けていく。
でも、これ… 何?
ちり、と奇妙な感覚を感じながら最後のページを開いた瞬間
ひらりと一葉の写真が零れ落ちた。
…え。
綴じられてなかったのかと拾い上げた瞬間、その手が止まった。
先ほどの合宿所の大部屋。
雑誌を読み耽っていた所を呼びかけられた瞬間を撮られたのであろう、
胡坐をかいた膝元から顔を上げた阿部が呆けた表情でこちらを見ている。
いつか聴いたあの否応なしに全てを自身に引き付けるような声が
頭に響く。
あの、たった一度だけ聞いた不遜なまでに力強い声が。
『 - タカヤ!』
この一枚で全てが分かった。
この写真を撮った人が誰かも、
このアルバムに感じていた違和感の正体も。
なんでこんなことばっか分かっちゃうんだろう。
オレ、莫迦なの、に。
「三橋」
突然呼びかけられて体ごと飛び上がる。
咄嗟にアルバムを背後に隠していた。
この、ただ一枚として榛名の写っていないアルバムを。
「ああ、それ見てたの」
ぎこちなく振り返った視線の先で阿部が
二つのグラスを載せたトレーを抱えていた。
「ご、ごめ」
「あ?なにがだよ。
別にいいよ、そんくらい見てたって」
気まずさに視線を逸らす横で阿部がローテーブルにグラスを移す。
その涼しげな音に惹かれるように見遣ると、
少し下から片膝をついて座り込む彼の静かな表情が見えた。
「それ、そんなとこにあったんだな。
とっくにもうなくなったと思ったのに」
身を乗り出すようにして三橋の背に手を伸ばし、
隠しきれていなかった一枚の写真を取り上げる。
「そ、れ」
掠れた声に、阿部がやや上目遣いにこちらを見やる。
「もしかしてあの人が撮った、の」
声が震える。
心音が、痛い。
阿部は、自分とは対照的にどこまでも落ち着き払っていた。
「あー」
そう答える阿部の左手が写真を持つ手に添えられる。
力を込められるかと思ったそれは、だが予期した音を立てることなく
ぺらりと写真を投げ出した。
はらりと宙を舞う写真。
放り出された印画紙が頼りなく下へ流れてテーブルの上に舞い降りる。
表が、上。
消されかけた過去が、ガラスの上で上を向いて
精一杯の自己主張を叫んでいた。
阿部の根底に確かに残る、刻み付けられた過去。
俯いた視界が、ラグのベージュに染まる。
「…おま、」
「オレ、は!」
彼から何も言わせたくなくて、
自分の手で始めて全ての責任を負いたくて。
三橋は俯いたまま今まで喉元で押し潰されていた名を口にした。
「オ、レは榛名さんじゃ、ない」
「…」
「オレは榛名さんじゃないよ、阿部君」
阿部は黙って三橋を見つめていた。
- なぜ、気が付かなかったのだろう。
時折左手のグローブでなく素手の右手に飛んでくる返球の意味に。
そんな時、違和感に18.44メートル先を見遣ると彼はいつも複雑な表情で
こちらを見つめていた。
あれはオレに謝っていたのか - それとも。
阿部の過去と榛名を繋ぐ写真を見てようやく思い出した。
ベスト8を賭けた県大の試合、傲慢とも思える表情で
阿部に見せ付けるために投げられた速球は、
その左手から放たれていた。
自分には見えていなかっただけで、
自分の傍にいながらも彼の背には常に榛名の姿があった。
今に至るまでそれに気付かず
球速も自覚も何一つ榛名に及ばないくせに彼に甘えて、
また過ちを犯してエースの座にしがみ付いて煩わせて
花井の気まで逆撫でして。
彼が、いや、二人が云った通り阿部はそうでなかった榛名の代わりに
リード通りに投げる自分を選んだだけなのに。
それ以上の理由を求めるのはオレの思い上がりなの、阿部君?
「お前、オレと榛名の話がしたかったのか」
じっと俯いたままの三橋を見つめていた阿部が
不思議そうに言葉を投げかけてくる。
スポークが単調な音を立ててから回る。
目の前のアスファルトを踏みつける薄汚れたスニーカーから顔を上げると、
薄闇の中に鮮やかに浮かび上がる白いシャツが視界に入った。
じいいいいい。
間延びした虫の音がぶつりと途切れる。
足を止めて歩みの遅い自分を振り返る阿部。
視線が合うと同時に再び自転車を引いて歩き出す無言の背中に、
ああ、残された時間は少ないのだと執行猶予を祈った。
どこもかしこも片付けられた広い部屋の真ん中に所在無く座り込む。
『飲み物持ってくるからテキトーに座っとけ』と云われて残されたまま
落ち着かなくてきょろきょろと部屋を見回す。
始めて訪れる阿部の部屋。
薄いベージュのラグマットとデスクとベッドと、
雑誌やら本やらが詰め込まれているカラーボックス。
じり、と膝だけでにじり寄ってみると
スポーツ雑誌やら野球の理論の本などが
ずらりと並んでいるのが見て取れた。
うわ、凄い。
さすが阿部君。
スポーツ障害、リハビリテーション、テーピン…グ?
見慣れない単語から視線を落とすと
一番下の段にアルバムらしき黒い背表紙が並んでいるのが目に入った。
い、いいか、な。
阿部君が戻ってくる前に戻せばいいよね、と
心の中で言い訳をしてそれを取り出す。
ズシリと重いそれを床に置いたまま分厚い表紙をぱくりと開く。
フィルムの奥の、古びたロッカーが立ち並ぶプレハブ。
部屋の隅に立てかけられた数本のバット、色あせたベンチ、
床に置かれたダンボールの『MIZUNO』のロゴ。
これ、どこかのクラブハウス…?
次の写真をめくってようやく理解出来た。
どうやらシニア時代の写真を集めてあるアルバムらしく、
次のページには合宿所と思しき部屋の畳の上で
先輩らしいアンダー姿の人にふざけて圧し掛かられて
もがいている阿倍の姿があった。
『ちょ、見てないで助けて下さいよ!』
周りで笑い転げるチームメイトにそう訴える彼の声まで聞こえるようだ。
思わず自分も苦笑しながらページを捲る。
そこには今よりも幼さを残した阿部が無愛想に
何枚もの写真に写りこんでいた。
何枚も、何枚も。
自分の知る阿部よりも少し髪の短い彼。
オレの知らない、阿部君。
そういえばあまり写真に写るのは好きじゃなかったな。
写真苦手なの、昔からだった、んだ。
くすりと笑いながら次のページを開けていく。
でも、これ… 何?
ちり、と奇妙な感覚を感じながら最後のページを開いた瞬間
ひらりと一葉の写真が零れ落ちた。
…え。
綴じられてなかったのかと拾い上げた瞬間、その手が止まった。
先ほどの合宿所の大部屋。
雑誌を読み耽っていた所を呼びかけられた瞬間を撮られたのであろう、
胡坐をかいた膝元から顔を上げた阿部が呆けた表情でこちらを見ている。
いつか聴いたあの否応なしに全てを自身に引き付けるような声が
頭に響く。
あの、たった一度だけ聞いた不遜なまでに力強い声が。
『 - タカヤ!』
この一枚で全てが分かった。
この写真を撮った人が誰かも、
このアルバムに感じていた違和感の正体も。
なんでこんなことばっか分かっちゃうんだろう。
オレ、莫迦なの、に。
「三橋」
突然呼びかけられて体ごと飛び上がる。
咄嗟にアルバムを背後に隠していた。
この、ただ一枚として榛名の写っていないアルバムを。
「ああ、それ見てたの」
ぎこちなく振り返った視線の先で阿部が
二つのグラスを載せたトレーを抱えていた。
「ご、ごめ」
「あ?なにがだよ。
別にいいよ、そんくらい見てたって」
気まずさに視線を逸らす横で阿部がローテーブルにグラスを移す。
その涼しげな音に惹かれるように見遣ると、
少し下から片膝をついて座り込む彼の静かな表情が見えた。
「それ、そんなとこにあったんだな。
とっくにもうなくなったと思ったのに」
身を乗り出すようにして三橋の背に手を伸ばし、
隠しきれていなかった一枚の写真を取り上げる。
「そ、れ」
掠れた声に、阿部がやや上目遣いにこちらを見やる。
「もしかしてあの人が撮った、の」
声が震える。
心音が、痛い。
阿部は、自分とは対照的にどこまでも落ち着き払っていた。
「あー」
そう答える阿部の左手が写真を持つ手に添えられる。
力を込められるかと思ったそれは、だが予期した音を立てることなく
ぺらりと写真を投げ出した。
はらりと宙を舞う写真。
放り出された印画紙が頼りなく下へ流れてテーブルの上に舞い降りる。
表が、上。
消されかけた過去が、ガラスの上で上を向いて
精一杯の自己主張を叫んでいた。
阿部の根底に確かに残る、刻み付けられた過去。
俯いた視界が、ラグのベージュに染まる。
「…おま、」
「オレ、は!」
彼から何も言わせたくなくて、
自分の手で始めて全ての責任を負いたくて。
三橋は俯いたまま今まで喉元で押し潰されていた名を口にした。
「オ、レは榛名さんじゃ、ない」
「…」
「オレは榛名さんじゃないよ、阿部君」
阿部は黙って三橋を見つめていた。
- なぜ、気が付かなかったのだろう。
時折左手のグローブでなく素手の右手に飛んでくる返球の意味に。
そんな時、違和感に18.44メートル先を見遣ると彼はいつも複雑な表情で
こちらを見つめていた。
あれはオレに謝っていたのか - それとも。
阿部の過去と榛名を繋ぐ写真を見てようやく思い出した。
ベスト8を賭けた県大の試合、傲慢とも思える表情で
阿部に見せ付けるために投げられた速球は、
その左手から放たれていた。
自分には見えていなかっただけで、
自分の傍にいながらも彼の背には常に榛名の姿があった。
今に至るまでそれに気付かず
球速も自覚も何一つ榛名に及ばないくせに彼に甘えて、
また過ちを犯してエースの座にしがみ付いて煩わせて
花井の気まで逆撫でして。
彼が、いや、二人が云った通り阿部はそうでなかった榛名の代わりに
リード通りに投げる自分を選んだだけなのに。
それ以上の理由を求めるのはオレの思い上がりなの、阿部君?
「お前、オレと榛名の話がしたかったのか」
じっと俯いたままの三橋を見つめていた阿部が
不思議そうに言葉を投げかけてくる。
- 『タカヤ!』
彼を呼んだその力強い声を、まだはっきり覚えている。
どうして、気が付かなかったのだろう。
あの瞳の、眼差しの、微かに伏せられたもの云いたげな表情の意味に。
同じように伏せた視線の先で
薄汚れたスニーカーが単調なリズムでアスファルトを噛み締めている。
からからと空回るスポークの音がひたりと止まった。
顔を上げると数メートル先で阿部が立ち止まって自分を振り返っていた。
慌てて自転車をぐいと引くと同時に阿部が再び前を向いて歩き出す。
から、と再びスポークが鳴く。
前を歩き続ける無言の背中に、残された時間の少なさを悟った。
*
「荷物、そこらへんに適当に置け。
飲みもん持ってくるから」
放り出すのではなく、だがどこか無造作にどさりとエナメルを床に置いて
阿部はすぐ下に降りていった。
始めて訪れる、阿部の部屋。
三橋は荷物を脇に降ろして
ぺたりとフローリングの上に正座で座り込んでいた。
広いだけの自分の部屋とは違い、整然と物が収納されて
収まるべきところに収まっているという印象だ。
几帳面な彼の性格を現すような部屋の隅の白いカラーボックス。
雑誌や本が納められているらしいその一番下は
アルバムらしき黒い背表紙が並んでいた。
手を伸ばして取り出してみると、ずしりとした重量が手前に傾いてきて
思わず手を引っ込めるとばたりと音を立てて床に倒れた。
あ。
どき、と心音が跳ね上がる。
恐らくどこかの合宿所なのだろう、
古びた畳の上で中学生と思しき見知らぬ男と
今よりも少し髪の短い姿の阿部が
下らなそうに笑いながら半分ムキになって取っ組みあっている。
お腹を抱えて笑い倒して囃し立てているチームメイト。
オレの知らない、阿部君。
勝手に見てはいけないと思いつつも手が勝手にページをめくっていた。
ぺらり、ぺらり。
目の前で4つづつの光景が展開されるページをめくっていると
最後のページに一枚の写真が取り残されたように
見開き2ページの中に収納されることなく挟まれていた。
畳に胡坐で座り込んでいる阿部。
膝に雑誌を抱え、こちらに向かって思い切り間の抜けた顔を上げている。
おそらく雑誌に夢中になっている最中に呼びかけられて
顔を上げた瞬間を撮られたのだろう。
何事か咄嗟には理解出来ずに呆けているその表情に、
何の脈絡もなくあの人を思い出した。
これ…、あの人が撮った、んだ。
確証はないが本能で悟る。
あの誰よりも誇り高い投手の、
心底おかしがって甲高く笑う声までが聞こえる気がした。
「あ、何。
それ見てたの」
がちゃ、とドアが開いて
ペットボトルとグラスを載せたトレーを抱えた阿部が入ってくる。
「わ、ご、ごめ」
ばたん。
反射的にアルバムを閉じると、再びどさりという重量のある音がした。
「いいよ、別に。
そんなとこにあったんだなそれ、もうどっか行ったと思ってたのに」
トレーを脇に置き、どこか懐かしそうな顔をして
阿部は三橋の向かいに座った。
す、と阿部の指先が先ほどのページを開く。
ぺらりと一枚だけの写真を取り出し、阿部は暫くそれを見つめて
穏やかな、だがどこか抑えたような声で呟いた。
「これ、あいつが撮ったんだ。
シニアの合宿ん時だった」
「…」
阿部は自分から彼の話題を振った。
「榛名、さん」
確かめるようにその名を口にする。
色々と思うところがあるだろうに自分からその話を許してくれた阿部の
真摯な情誼に応えたかった。
「…」
黙り込む阿部。
三橋もまた跳ね上がる心音の苦しさに俯いて何も云えずにいた。
「さっきの」
びく、と弾かれたように顔を上げる。
「聞いた、よな」
見つめてくる阿部。
「…、」
逡巡した後、ぎこちなく頭を縦に振った。
「ひでぇ奴って思っただろ。
失望したか」
何の感情も読み取れない表情と、声。
三橋は心の奥が鈍く痛むのを感じながら首を横に振った。
彼を呼んだその力強い声を、まだはっきり覚えている。
どうして、気が付かなかったのだろう。
あの瞳の、眼差しの、微かに伏せられたもの云いたげな表情の意味に。
同じように伏せた視線の先で
薄汚れたスニーカーが単調なリズムでアスファルトを噛み締めている。
からからと空回るスポークの音がひたりと止まった。
顔を上げると数メートル先で阿部が立ち止まって自分を振り返っていた。
慌てて自転車をぐいと引くと同時に阿部が再び前を向いて歩き出す。
から、と再びスポークが鳴く。
前を歩き続ける無言の背中に、残された時間の少なさを悟った。
*
「荷物、そこらへんに適当に置け。
飲みもん持ってくるから」
放り出すのではなく、だがどこか無造作にどさりとエナメルを床に置いて
阿部はすぐ下に降りていった。
始めて訪れる、阿部の部屋。
三橋は荷物を脇に降ろして
ぺたりとフローリングの上に正座で座り込んでいた。
広いだけの自分の部屋とは違い、整然と物が収納されて
収まるべきところに収まっているという印象だ。
几帳面な彼の性格を現すような部屋の隅の白いカラーボックス。
雑誌や本が納められているらしいその一番下は
アルバムらしき黒い背表紙が並んでいた。
手を伸ばして取り出してみると、ずしりとした重量が手前に傾いてきて
思わず手を引っ込めるとばたりと音を立てて床に倒れた。
あ。
どき、と心音が跳ね上がる。
恐らくどこかの合宿所なのだろう、
古びた畳の上で中学生と思しき見知らぬ男と
今よりも少し髪の短い姿の阿部が
下らなそうに笑いながら半分ムキになって取っ組みあっている。
お腹を抱えて笑い倒して囃し立てているチームメイト。
オレの知らない、阿部君。
勝手に見てはいけないと思いつつも手が勝手にページをめくっていた。
ぺらり、ぺらり。
目の前で4つづつの光景が展開されるページをめくっていると
最後のページに一枚の写真が取り残されたように
見開き2ページの中に収納されることなく挟まれていた。
畳に胡坐で座り込んでいる阿部。
膝に雑誌を抱え、こちらに向かって思い切り間の抜けた顔を上げている。
おそらく雑誌に夢中になっている最中に呼びかけられて
顔を上げた瞬間を撮られたのだろう。
何事か咄嗟には理解出来ずに呆けているその表情に、
何の脈絡もなくあの人を思い出した。
これ…、あの人が撮った、んだ。
確証はないが本能で悟る。
あの誰よりも誇り高い投手の、
心底おかしがって甲高く笑う声までが聞こえる気がした。
「あ、何。
それ見てたの」
がちゃ、とドアが開いて
ペットボトルとグラスを載せたトレーを抱えた阿部が入ってくる。
「わ、ご、ごめ」
ばたん。
反射的にアルバムを閉じると、再びどさりという重量のある音がした。
「いいよ、別に。
そんなとこにあったんだなそれ、もうどっか行ったと思ってたのに」
トレーを脇に置き、どこか懐かしそうな顔をして
阿部は三橋の向かいに座った。
す、と阿部の指先が先ほどのページを開く。
ぺらりと一枚だけの写真を取り出し、阿部は暫くそれを見つめて
穏やかな、だがどこか抑えたような声で呟いた。
「これ、あいつが撮ったんだ。
シニアの合宿ん時だった」
「…」
阿部は自分から彼の話題を振った。
「榛名、さん」
確かめるようにその名を口にする。
色々と思うところがあるだろうに自分からその話を許してくれた阿部の
真摯な情誼に応えたかった。
「…」
黙り込む阿部。
三橋もまた跳ね上がる心音の苦しさに俯いて何も云えずにいた。
「さっきの」
びく、と弾かれたように顔を上げる。
「聞いた、よな」
見つめてくる阿部。
「…、」
逡巡した後、ぎこちなく頭を縦に振った。
「ひでぇ奴って思っただろ。
失望したか」
何の感情も読み取れない表情と、声。
三橋は心の奥が鈍く痛むのを感じながら首を横に振った。
Q51以降は大人向けの質問となっておりますので
『続き』に格納してあります
18歳未満の方、または18禁が苦手な方は閲覧厳禁です。
ご注意&ご了承の上お開け下さい。
1 あなたの名前を教えて下さい。
H 花井です。
A 阿部 隆也。
2 年齢は。
H 16。
A 15。
H あれ?
お前ってまだ15なのかよ。
A なんだよ。
H いや、いつもエラソーだからなんとなく。
年下かよ。
年下かよ。
A 悪かったな。
(むすっ)
(むすっ)
3 性別は。
H 男です。
A 見て分かんねぇのかよ、男だ。
4 貴方の性格は。
H んー… 世話焼き、かな。
A 細かいところが気になる方だとは思う。
5 相手の性格は。
H 無愛想、直情的、大雑把なのに変なところで細かい。
かわいげがない。
A んなもんあってたまるか。
そうだな、よく気の回る奴だと思う。
6 二人の出会いはいつ、どこでですか。
H 部活に入部した日、グランドで。
A 同じく。
オレの方はその前にこいつの試合をみたことがあったけどな。
H そうだったのか。
H そうだったのか。
7 相手の第一印象は。
H 3打席勝負挑まれて挑発されて、何だこいつと思った。
A 骨のある奴だなと思った。
H へえ?あん時そう思われてたなんて意外だな。
A まあな。
8 相手のどんなところが好きですか。
H 好…。(赤面)
つ、冷たいように見えて実は相手のことを考えてたり
本当は優しいところかな。
A …。
オレを大切にしてくれる所。(ぼそっ)
(↑花井には聴こえていない)
9 相手のどんなところが苦手ですか。
H 素直じゃないところ。
分かりにくいんだよ、こいつの云いたいことは。
A 悪かったな。
あー… 変にテンパりやすいところ。
もうちょっと落ち着いてろって。
主将なんだから。
10 貴方と相手の相性はいいと思う?
H 相性ぉ?
んー…
A 男同士で相性もなにもねぇだろ、気色わりぃ。
H ま、相性がいい云々とオレたちの関係とは別問題だと思うし
オレもお前と相性がいいとは思わねぇけど
お前にそう云われるとなんか凹むな。
11 相手のことを何で呼んでますか。
H 阿部。フツーに。
A 花井。
それ以外ねぇだろ。
12 相手に何て呼ばれたいですか。
H 今のままでいい。
A ああ、そうだな。
H (本当は隆也って呼んでやったら心の底では喜ぶんだろうけど
表面じゃすっげぇ怒りそうだからなあ)
13 相手を動物に例えたら何ですか。
H なんだろうな。
猫?
(気位が高ぇし誰にも懐かねぇから)
A はぁ?
なんでだよ。
なんでだよ。
うーん、ドーベルマンかな。
番犬になるような大型犬。
H オレは犬かよ。
A 番犬みてぇなっつったろ。
14 相手にプレゼントをあげるとしたら何をあげますか。
H なんだろうな。
バッティンググローブとかタオルとか?
A だな。
野球に関する消耗品なら外さねぇだろ。
H (本当はアクセサリーとかやりてぇけど、
こいつ照れて表面じゃ嫌がりそうだしな)
15 プレゼントをもらうとしたら何が欲しいですか。
H うーん、オレもそういうのかな。
あとは野球関係ないとこでケータイのストラップとかさ。
(ちらりと阿部を見ながら)
A あー、オレもそんな感じ。
なんでもいいよ。(ぶっきらぼうに)
(アクセサリー、とか
んなこと云えるワケねぇよ)
16 相手に対して不満はありますか。
それはどんなことですか。
H 素直じゃないところ。
H 素直じゃないところ。
分かりにくいんだよ、もっと素直になれ。
A 悪かったな、オレはこういう性分なんだよ。
お前はもっと落ち着けよ、
ちっちゃなことでいちいちテンパってんじゃねーよ。
H (うぐっ)
17 貴方の癖は何ですか。
H へっ?
特にない… つもりですけど。
(え、何?
オレなんかあったっけ?)
A オレも。
18 相手の癖は何ですか。
H 怒ると目を細める。
A マジになったときは急に無口になる。
19 相手のすること(癖など)でされて嫌なことは何ですか。
H 三橋には色々煩く云うくせに自分の体調管理には無頓着なところ。
もっと自分の体を大事にしろ。
A そういう気色悪いこと云うのやめろよ。
H あのなぁ、
オレはお前のことを考えて云ってんだぞ。
A あー、分かった分かった。
H 全然分かってねぇだろ、お前。
20 貴方のすること(癖など)で相手が怒ることは何ですか。
H んー、特にねぇな。
気が短いからいつも色々云ってくるけど
特定の何かについて煩いってことはない。
A こいつは何について怒ってんのかよく分かんねぇんだよ。
21 二人はどこまでの関係ですか。
H ど、どこまでって。
そ、その…(赤面)
A どうでもいいだろ、そんなこと。
(赤面してそっぽを向く)
(赤面してそっぽを向く)
22 二人の初デートはどこですか。
H ク、クリスマスイブ、ショッピングモールで…。
(うわ、恥ずかしー…)
A はぁ!?
あれデートだったのかよ!?
H あ、ああ。
オレは実はそのつもりでお前を呼んだんだ。
A うわ、信じらんね…(赤面)
23 その時の二人の雰囲気は。
H オレは… 嬉しかった。(かあああっ)
A 変なこというんじゃねぇよ!
マジで部活の打ち上げの買出しかと思ってた。
雰囲気も何もんなことちっとも思わなかったよ、
だってそれお前が告ってくる前じゃん!
H だろうな。
24 その時どこまで進みましたか。
H て、手ぇ繋ぐところまでは。
A オレ、もう帰る。
H ま、待てって。
まだ終わってねんだから。
A ちっ。
25 よく行くデートスポットは。
H 映画とかかな。
A 変な恋愛映画とかよく見つけてくるよな、お前。
H オレはこれでも苦労してんだよ。
26 相手の誕生日。どう演出しますか。
H フツーにプレゼントやる。
変に凝ったらこいつ怒るし。
A …。
なんか買って渡してやる。
27 告白はどちらからでしたか。
H オ、オレから。
A …。(そっぽを向いている)
28 相手のことをどれくらい好きですか。
H …常識って奴がおかしくなるくらいには。
A なんだよ、これ。
大体オレはこいつを好きとかそういうわけじゃ…
H 違う、のかよ。
A …。
(憮然と顔を背けている)
(憮然と顔を背けている)
29 では、愛してますか。
H …ああ。
A …っ。
H なあ、お前は?
A なっ… し、知るかよ!(動揺)
H なあ、云えって。
云ってくれ、阿部。
A …。
H (やはり、と諦めた)
30 云われると弱い相手の一言は。
H ひねた性格なこいつに
『オレを大切にしてくれるのか』みてぇなこと云われると
ああ、こいつは絶対に傷つけちゃだめだって思う。
A さっきみてぇなこと云われると…。
どう答えりゃいいのかわかんねぇし。
31 相手に浮気の疑惑が。
どうしますか。
H …。
H …。
オレよりも好きな奴が出来たのかって
喜んで手を引かなきゃいけないんだろうけど…
きっと耐えらんねえ。
そいつから阿部を奪い返そうとすると思う。
A オレみてぇな奴といるよりそのほうがいいんじゃねぇの。
(密かに考え込むような表情)
32 浮気を許せますか。
H やっぱり…許せねぇ。
ぜってー奪い返す。
A 許すも何も、こいつがそいつの方を好きになったんなら
オレがどうこうできることじゃねぇだろ。
H オレは、お前以外のやつを好きになったりしねぇ。
信じてくれ。
A …。
33 相手がデートに1時間遅れました。
どうしますか。
H 何かあったのかって心配になって電話する。
A 黙って遅れるような奴じゃねぇし。
何かあったのかってメールか電話する。
34 相手の身体の一部で一番好きなのはどこですか。
H 耳。
照れると真っ赤になってすげー分かりやすい。
A …手。
ごつごつしてて大きくて、あー、高校球児の手だなって思う。
H あ、阿部。(どきどき)
A な、何だよ。
35 相手の色っぽい仕種ってどんなものですか。
H バッティンググローブを外す仕種。
ドキッとする。
A 人の手を取る仕種。
36 二人でいてドキっとするのはどんな時ですか。
H したい時とか、黙って見つめられるとドキッとする。
A 急に後ろに立たれたりして身長差を意識したとき。
37 相手に嘘をつけますか。
嘘は上手いですか。
H ああ。
A オレは上手くついてるつもりなのになんでかすぐバレるんだよな、
むかつくことに。
むかつくことに。
38 何をしている時が一番幸せですか。
H 部屋で二人きりでのんびりテレビ見たり、予習したり。
そういう何気ない静かな時間がすっげー幸せだ。
A 野球してるとき。
39 ケンカをしたことがありますか。
H ああ。
A しょっちゅうだよな。
40 どんなケンカをしますか。
H オレが疲れてたりして余裕がないとき、阿部のいつもの文句や短気に
本気で腹を立てちまってつっかかる。
A だな。
分かりやすいんだよ、お前。
41 どうやって仲直りしますか。
H 暫く冷却期間を置いてからお互いが悪かったって謝る。
A うん、大体そんな感じだよな。
H お前も意外とちゃんと謝ってくれるんだよな、しぶしぶだけどさ。
A 悪かったな、どーせ素直じゃねえよ。
42 生まれ変わっても恋人になりたいですか。
H ああ。
A …ああ。(ぼそっ)
H あ、阿部!
A うるせぇ!
43 「愛されているなぁ」と感じるのはどんな時ですか。
H 二人きりのときにわがままを云われたりして甘えられた時。
オレだけに弱さを見せたり甘えられると
オレはこいつにとって特別なんだなあって思う。
オレはこいつにとって特別なんだなあって思う。
A オレっていう存在を真剣に求められた時。
44 「もしかして愛されていないんじゃ」と感じるのはどんな時ですか。
H 照れ隠しとかですげー冷たくされたとき!
あれ酷くね!?
A マジで逆ギレされたとき。
でもそう思うことなんてめったにねぇよ。
45 貴方の愛の表現方法はどんなものですか。
H 抱きしめて、傍にいてくれって伝える。
A そんなの知らねぇよ。
46 もし死ぬなら相手より先がいいですか、後がいいですか。
H 後。
オレがいなくなった後こいつを他の奴に渡したくねぇ。
A …、先。
オレを置いていくな…。
H …!(どきっ)
47 二人の間に隠し事はありますか。
H あー、細かことはあるけどそんなたいそうなもんはない、かな。
A ねぇよ、んなもん。
H だよなぁ。
48 貴方のコンプレックスは何ですか。
H うっ。
な、名前。
A 別にいいじゃねぇか。
オレはしいて云えば体格かな。
特に気にしたこたぁねぇけど、
捕手としてクロスプレーに耐えられる体にはなりたいとは思う。
49 二人の仲は周りの人に公認ですか、極秘ですか。
H ひ、秘密。
A 云うようなことじゃねぇだろ、こんなの。
H あー、でもなぁ。
田島の奴薄々気付いてるみてぇだぞ。
A マジかよ!?
H 流石田島だよな。
怖えー…。
50 二人の愛は永遠だと思いますか。
H ああ。
A …。
H …(答えを期待して阿部を見る)
A (赤面)
わ、わかんねぇよそんなの。
でも、お前以外の奴好きになんてなったことねぇから…
お前がYESだって思いたきゃ勝手にそう思ってりゃいいだろ!
H 阿部…!
オレたちはいつまでも幸せでいられる。
そんなことありえないって他の奴らは云うかもしんねぇけど
オレは他でもないお前とだから強く、強くそう思える。
嘘だとしてもそれでいい。
15なら真実より嘘を信じたい。
なぁ、田島 - 。
なーんてイメージ湧いてきました。
タイトルはパティ・ジェンキンス『モンスター』から。
先日、日参している某ハナタジサイト様のチャットに
紛れ込んできました!
もう、ものごっついクオリティの花井や田島が画面に現れては消えていき…!
そこの激ぷりなハナチャン(ちょっと自主規制(笑))に
『北ちゃーん』って呼びかけられたり
真面目な顔をした花井に『北ちゃん…』とか思われた日にゃあもう!
終始心臓ばくばくしっぱなしで悶え倒れてました。
阿部熱を抑えるのにずっと必死だった…。
色々とお気遣い戴き有難うございます。
北川はちょっと自制を覚えた方がいいよ。(ほんとにな!)
まさに夢のような3時間。
主催者様、有難うございますー!
今度是非あの阿部を花井が助けに来る話を(笑)
そこで話題に上がった小咄をここでちょっとまとめておきたいと思います。
まず、まだまだ付き合うとか全然そういう話はしてなくて
ホントにふつーの『チームメイト』な2人。
花井は密かに田島のことが好きなんだけど何も云えずにいる。
そんな中ドラッグストアに買出しに行くことになって、
別に主将としての職権乱用したわけじゃないけど
みんな都合が付かなくて家の近い田島と2人で行くことになる。
場所は、西○通りに面したあの大きなドラッグストア、とか(笑)
(あのY駅へのバス停があるお店です)
田島を待ってる時点で既にドキドキしてる花井。
(遅せーなー)とか思いながらも嬉そうにそわそわして待っててくれたらいいよ!
そんで10分くらい遅れて田島到着。
「おー、もう来てたの?
わりーわりー!」
「わりー、じゃねーよ!
待ち合わせ2時っつったろーが!」
「だーってさみーんだもん、
なかなかコタツから出らんなくてよー」
「あー、はいはい…。
ほら、いいから行くぞ」
「はいよー」
入店3秒で花井の視界から消える田島。
安売りのお菓子とか
買い出し関係なくフツーに店内見て遊んでる(笑)
「(ったく、あいつは…
少しはじっとしてらんねーのか)
えっと、オキシフルと、ガーゼと…
あとはアクエリの元か。
これを5箱と…」
「(ばたばたと足音が近付いてくる)
ねーねー花井!
ソ○ジョイ安かった、これ買って!」
「あのなぁ…。
部活の買出しに来てんだぞ、
部費でそんなん買えるか!
自分で買え!」
「ちぇー。
花井のケチ~」
「お前なあ…」
「あ、あそこペットボトル安売りしてる!
オレCCレモン飲みてー、ちょっと見てく」
「こら、ちょっと待て!
んな関係ねーもんばっか見てんなよ!
いーからサージカルテープ捜して来い!」
「サージ…?
何それ」
「…(がくり)
いつも指に巻いてる固定用のテーピングのことだ!」
「あー、あれね。
へいへい
(しぶしぶ探しにいく)」
「(やれやれ…。
あいつはほんと野球の以外のことになると
からっきし集中力ねーのな。
野球に関することだとほんとすげーのに。
でも、田島と2人っきり、だ。
ちょっと嬉しい、かも…
って、何考えてんだ!
うわっ、オレ恥ずかしーヤツ…!」
「はっないー!」
「う、うわっ!
なんだよいきなり!」
「なんだよ、何驚いてんの。
テープあったよー。
んで、ついでにこんなん見つけてきたー!」
「はぁ…?
(田島が持ってきたものを見てみる。
なんとゴムの『サ○ミオリジナル』!)」
「うわっ…っ!」
「ひひー、こういう店ってこういうのも売ってんだよな。
これうちのアニキが使ってたー!
一人でするときに便利だからオレも時々使ってる~♪」
「ばっ…
おま、なんてモン持ってきてんだ!
元のとこ戻してこい!」
「なんだよ、マジで便利なんだぜ~。
花井も今度試してみろよ!」
「試…(絶句)
ほら、いいからいくぞ!
もうマジで戻して来い!」
「ちぇ~」
「(ただでさえ意識しちまってんのに…
今そんなん見たら余計意識しちまうだろーが…!)」
「…くすっ」
「…な、なんだよ」
「だって、花井顔真っ赤にしてる。
さっきのでそんなに照れたわけ?
ウブだね~(げらげら)」
「お、お前なあ!
大体お前があんなん持ってくるから…
(…)」
「ん、なーに、花井?」
「…なあ、お前さ。
このあとなんか用事でもある?」
「いーや?暇だよ~。
家にいてもジーちゃんの畑の手伝いさせられるしさ、
どっかにばっくれようと思ってる」
「じゃあさ…。
オレンち、こねぇ…?
(どきどき…)」
「おっ、いーね!
行く行く!
花井んちってPS3ある?」
「2ならあるけど…。
その代わり英語の問題集5ページ終ってからな」
「えええー!
なんだよそれ!
花井ひっでー!」
「あのなぁ、赤点取ったら試合出れねーんだぞ!
オレぁお前と三橋の成績に責任持てって
カントクから直接云われてんだよ!」
「だからって5ページもやらせることねーじゃん!
オニー!アクマー!
花井のおーぼー、しょっけんらんよー!」
「その二つを漢字で書けたら3ページに減らしてやるよ」
「…うぐっ」
「ほら、いつまでも店内で騒いでるわけにもいかねーだろ!
会計済ませて部室に置いて
さっさとオレんちいくぞ!」
「うぐぅううう~…
花井のおにぃいいいい~…。
こなきゃよかった…」
「(小さな声で)
オレは…
楽しいよ。
デートみたいで… さ」
「へっ?
なんか云った?」
「なんでもねー!
ほら、行くぞ!」
「って、いてーよ!
ひっぱんな花井ー!」
こんなんでいかがでしょーか。
ここでしぶとく
『じゃあ阿部んとこに数学教えてもらいに行くか』
って入れようとしたのは永遠の秘密。
未練がましいぞオレ。
では、また!