だーいうぃずゆあ、
あーいである・ごっですっ!
「アダムの林檎」で観客に投げる林檎を
いつも小暮さんに齧らせて貰っている清水さん。
歯に詰まってしまった林檎が
次に唄ったこの「APHRODITE」で
「ごっですっ!」とコーラスを入れた瞬間取れたそうです。
『歯にもいい「APHRODITE」です』
うん、確かに。
さて、今回、ちょっと、というかかんなり内輪受けな小説を書きました。
阿部君受けの、相手が5人の大学生オリジナルキャラ。
ほぼ毎晩のように
「じゃあラストネームは」
「ファーストネームは」
「顔はこんな感じだね」
「このキャラの過去はこうだ」
「この子はこの子に対してこう思ってたら萌える」
など二人の間で燃え&燃えまくった設定。
先方様の考えるキャラがあまりにもかっこよく、
あんまりにも滾りすぎたのでうっかり一本書いてしまった。
お前… 他にも色々溜まってるよな?
二人だけの間で盛り上がった設定なので、
もし先方様が書かれるにしても
本編は阿部君陵○メインで、
この子達の設定を陽の目を見させるのは
スピンオフでと話しているほど。
気が付いたら書き上がってしまったこの一本も
この設定の話なので恐ろしく説明不足。
色々付け加わりすぎたので説明はしない。
なので全く面白くないと思います。
あえて小説として完成させようとは思わなかった。
なのでサイトにも載せない。
萌えを昇華するためだけにここに吐き出す。
もし設定をお知りになりたいという方が要らしたら北川まで。
先方様に許可を取った上でこっそりお知らせします。
タイトル『GREAT DEVOTION』。
「何もかもが嘘だと悪魔が囁いてる」
このくだりがすっごくこの子達のイメージに合ったので
ここを使えてよかった。
「続き」からどうぞ。
色々だだ漏れでばればれなのですが、
あっと気が付いた方、何も云わないように。
あなたの心にそっとしまっておきましょう。
色々やれて、北川は満足です。
うん、超自己満足だって分かってる。
サイトに載せるのとかアンソロとか
これ以外は自己満足にならないようがんがるから許して。
もし感想とか貰えたら嬉しすぐる。
反省はしている。
だが後悔はしていない。
「高村ー」
雑踏の喧騒を突き抜けて、聞きなれた澄んだ声が耳に届く。
「おー、どうした、清水」
講義を終えてざわざわと教室から出て行く学生の波を掻き分けて
少し色素の薄いダークブラウンの髪が近付いてくる。
その肩には黒い背景を背に白い石膏の頭部が横たわっている表紙の分厚い本が
手で支えながら乗せられていた。
「おっ、ヒルガードの『INTRODUCTION TO PSYCHOLOGY』!
凄いな、それどこで見かけたんだ?」
「今しがた大槻センセんとこにレポート提出に行ったら個人研にあってな。
お前、探してるって云ってたろ?
代わりに借りてきてやったぞ、貸し出しノートにお前の名前と
学籍番号書いておいてやったから」
「ああ、ありがとうな。
早速和訳版と照らし合わせてみる」
人の波を切り抜け、すぐ傍まで辿りついた清水は肩の本を高村の方へ降ろした。
受け取ると同時に、茶色い、巨大な塊の重量がずしりと細い手にのしかかる。
「うわ、でもこれどうやって持って帰れってんだ…
今日オレ図書館でボウルヴィ2冊借りちまったんだぞ」
「ああ、そうか。
お前比較心理学取ってたもんな。
書けそうか?レポート」
柳眉を潜めるようにして尋ねてくる清水。
男にしておくにはもったいないほど、綺麗な男だと思う。
興味を持った分野の第一人者がいるという理由で選んだ学部だったが、
自惚れるわけではないがいささか自分にとってはレベルが低すぎた。
高校の頃から周りの人間の頭の出来に密かに失望にも似たものを感じ、
それでもまあそんなものかと思いながら卒業して
未練がましく少しの期待を抱いて学部に上がった。
結果としてそれはやはり裏切られることになったのだが、
その中でようやく出会った知性の欠片がこの清水だった。
聡明で、学術、芸術の話を自分の満足のいくレベルで出来るのは彼だけだった。
「あー…
ようやく「利己的な遺伝子」見つけたからな。
でも締め切り来週なんだよな、医学概論の提出日と重なるんだ」
「うわ、大変だな…。
松崎センセのだろ、医学概論って。
単位落とされやすいっていうからな、それは怖いな。
だったらそんな分厚いのじゃなくて「ソロモンの指輪」にでもしとけよ。
そっちの方が読みやすくて楽だろ」
「んー、でも折角手に入れたからな。
まあいいや、とりあえずこれロッカーに入れてくる」
「ちゃんと持って帰れ。
勉強しろよ」
ふ、と細面に悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
「いい、研究室で読む。
どうやって持って帰れってんだ、こんなん」
「根性」
真面目腐った顔で即答する清水。
本気なのか揶揄なのか判別が付かない。
高村はどっと疲れを感じて肩を落とした。
「小暮みたいなこと言うなよ、お前…」
その名前に、清水の流麗な顔にすっと翳りが差した。
小暮 義信。
清水の幼馴染であり、恐らくは彼に対してもっとも影響力を持つ人物だ。
そして、その逆も。
「ちょっと話があるんだけど。
少しだけ時間、いいか」
彼を見て、始めてこの世にいわゆる社会階層というものがあるのだと知った。
世の中全て平等という大人たちのプロパガンダなどただの空しい幻想に過ぎない。
子供が与えられてしかるべき正当な庇護と配慮を知らずに育った小暮。
彼の環境と、彼自身の短慮かつ直情的な性格が相まって生まれた粗暴な男だ。
不幸な男、だと思う。
だが、不器用ながらも彼なりにこの清水は大切に思っているらしい。
「あいつの - 小暮のことなんだけどな」
がたん。
プラスチックの背もたれの欠けた安っぽい椅子を引く音が
静まり返った空間に響いた。
後期考査中の今は部活やサークルも一切活動停止になっている。
加えて学生課や生協のある棟と別棟になっているこの会館を
利用する者は全くおらず、
高村の向かいに腰掛けた高村は空調と明かりを付けたばかりの談話室で
上質なカシミアのセーターを軽く摩りながら重い口調で切り出した。
周りにはぼろぼろになって変色している古いものから
鮮やかな色を残す新しいものまで
様々なサークルや講座、セミナーのチラシが無粋な画鋲で貼り付けられている。
幼馴染でもなければ小暮と決して出会うことのなかっただろう、
上流階級の血を引く清水。
名字の異なる父親は衆議院に籍を置くいわゆる代議士で、長い間参議院で
燻っていたらしいがついこの間の選挙で念願の衆議院出馬を果たしたらしい。
いずれにしても高村の関心の範疇ではなかったが。
原宿の裏辺りで引っ掛けた女の伝手という全くの偶然で彼の出自を知った。
確認したわけではないが、それが事実だとすれば
その大橋とかいう家の人間は全員腐りきっている。
今更とも思うが身近な人間に関してそういう話を聞いて流石に食傷したものだ。
「なんか、あいつ最近おかしくないか」
「おかしいって?」
「どこか荒れてるっていうか、いらついてるっていうか」
「そんなの今さらだろ。
あいつはそういう奴じゃねぇか」
「違う!
そうじゃなくて… 言葉じゃ上手くいえないけど、
今のあいつはあいつ自身じゃない。
どこかおかしい気がするんだ」
どこかを言葉を選んで話す、品と教養を感じさせる言葉遣いと話し方。
おそらく小暮と一緒にいなければ、そして自身の出自に鬱屈していなければ
自分達がしているような犯罪行為に
手を染めるような素養の人間ではないのだろう。
小暮がまるで宝物のように扱う理由が、傍から見ていてもよく分かった。
「どこかって、どこがだよ」
「だから言葉じゃ説明できないって云っただろ。
女に手酷く当たってるみたいだし… 何かあったのかな」
不安そうに目を伏せる清水。
これは…。
高村は胸の奥から吐き気がせり上がってくるのを感じた。
まったく、嫌になる。
あの女の話してた事は本当かよ…。
はあ、とため息をついた高村を清水が不服そうに睨む。
こいつ、もしかして。
「お前に心当たりはねぇのかよ」
「は?
オレあいつに何かしたか?
お前何か聞いてるのか」
不思議そうに聴いてくる清水に、一瞬遅れて思わず心の中で舌打ちした。
最悪、だ。
小暮が大橋の家に何もしなかったのは、
恐らく清水が何も覚えていないことを知っているからだろう。
それを知り、それでも何もしてやれない憤り。
おそらくそれが今彼が荒れている理由だ。
高村自身も清水を目の前にして溜飲の下がらない漠然とした不快感が
せり上がってくるのを見ない振りをするように目を閉じた。
法律は正しい?
法を、信義則を犯した者は必ず罰せられる?
じゃあその法律とかいう金科玉条のお飾りでこいつを護ってみせろよ。
大橋の両親を裁いてくれよ。
どうせ小暮があんたらの代わりに大橋を断罪したら
その次はあんたらが小暮を処罰するんだろう。
あいつらを野放しにしてるあんたらが。
下らない。
何もかも嘘だ。
「いや… 別に」
「…そうか」
清水が静穏な声で呟いて俯いた。
「悪かったな、時間取らせて。
でも、何か分かったら教えてくれ。
このままじゃあいつのためによくない」
「お前がそんな気にすることじゃねぇだろ。
ほっとけよ、あいつが荒れるのなんていつものことだろ」
「まあな…」
そうは応えたものの、釈然としない辞色で清水は去っていった。
一人残された談話室で大仰なため息をつく。
自分で思い出すならまだしも、この件が原因で彼の準備が整う前に
外的要因で思い出させてしまうわけには行かないだろう。
高村は眉根を寄せて少し思案すると、ジーンズのポケットから
携帯電話を取り出した。
ちかちかと光る、メール着信を知らせるアイコン。
『FROM 石川
独語がやばい!
大学生にもなってペーパーテストとかマジありえねー!
発達心理学のウィニコットのレポート、書いたら見して!
考査終わったらまたターゲット漁りにいこうって湯澤と話してるんだけど、どう?
小暮が今度は男でも面白いって云ってた。
楽しみー、こういうことでもなきゃオレ頑張』
軽い頭痛を感じながらメールを閉じ、電話帳から目当てのデータを呼び出す。
「ああ、小暮か。
今ちょっと時間あるか?
少し話があるんだけど…」
静まり返った談話室に、潜められた高村の声が響く。
阿部隆也が彼らのターゲットとして捕まるまで、あと一年。
[3回]
PR